三重県伊賀市別府690-1

愛農かまど

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 愛農かまどのこれからと現在

愛農かまどは、戦後から昭和30年代にかけて愛農会の生活改善事業として全国の農村に普及されました。

 

当時、農村家庭では煮炊きは薪で行われており、薪燃料を山から調達することで日本の森林資源が枯渇してしまうことを心配した愛農会創始者小谷純一が少ない薪で調理ができる熱効率の良いかまどの開発を呼びかけ、料理研究家の酒井章平氏が考案したのがこの愛農かまどです。

 

昭和30年代中ごろになり農村にもプロパンガスが普及するようになってからはその存在は忘れ去られていましたが、2004年に愛農会員の野呂由彦さん(三重県多気町)が近隣に住む故・北村勝一さん(2015年92歳でご逝去)の指導のもとご自宅に設置されたことで技術と木型が野呂さんに手渡され、愛農かまどは現代に息を吹き返しました。

 

その後、ブルーベリーフィールズ紀伊国屋代表の岩田康子さんからの依頼を受け2007年に滋賀県大津市にあるレストランに一基の愛農かまどが設置されたのを皮切りに、紀伊国屋が経営する他のカフェやレストランにも次々と愛農かまどが建てられていきました。

そうして愛農かまどは多くの人に知られることとなり、全国にじわじわと広がっています。


 

愛農かまど製作について

愛農かまどを作るには最新の「設計図」と「木型」が必要です。

木型無しでは、愛農かまどの最大の特徴である少ない薪で煮炊きできる構造にはなりません。

また、木型および設計図は知的財産でもあり愛農かまどの歴史やそこに関わってきた方々の努力や知恵の結晶でもありますので、設置方法や設計図をホームページに掲載することは禁止です。

 

① 自力製作

かまど材料や道具の準備から製作までの全てをご自身で行いたい方はこちらがおすすめです。

  愛農会から木型と設計図をレンタルし、自身でこつこつと作りあげる自力製作になります。   木型と設計図の貸し出しをセット受ける必要があります。※下記に詳細あり  

②伝承者と一緒につくる

「伝承者」とは、愛農かまど製作にあたっての講師のような役割です。その方々と一緒にかまどを作りあげていくという方法もあります。

伝承者は愛農かまどの製作技術だけではなく愛農かまどの開発経緯や歴史、愛農かまどの精神性を共に育み伝えていく者です。事前の相談から現地へ赴いての製作支援やワークショップ講師などが可能です。

伝承者派遣のご依頼は愛農会に連絡して紹介を受ける、またはご自身で伝承者に直接連絡をとることになっています。

  木型の貸し出しを受ける必要があります。※下記に詳細あり  

木型設計図レンタルなど


【木型レンタル注意事項】
  • 木型は手作りの木製加工品です。取扱いに十分ご注意下さい。
  • 万が一、木型を破損してしまった場合は破損の状況に応じて修復に必要な経費をご負担いただきます。
  • 全損の場合は10万円、それ以外破損パーツに応じて修復に必要な経費を請求いたします。
  • 作成時かまどから木型を取り出す際に時間をおきすぎると取り出せなくなりますのでご注意ください 
  • 伝承者の監督下作業等の破損は伝承者負担になります。伝承者監督外の破損は施主の負担になります
  • 木型の複製、あるいは他者への貸し出しは禁止です。
  • 1度のレンタルで設置できる基数は1基のみになります。
  • 木型到着後、1週間以内に愛農会までご返送下さい。
  • 送料はご負担下さいますようお願いいたします
  • 木型は綺麗にしてご返却下さい
  【木型レンタル 費用】
  • 木型レンタル料:30,000円(税込)/1基、1回+往復送料
  • 延滞料:返却予定日から1日/8,000円(税込)
  • 木型レンタル状況により延滞できない場合もあるので延滞の場合は早めに本会へ連絡をする。
  • 木型レンタル(1週間)をしたつづきの日に借りる場合のみを延滞として認める。
  • レンタル以外の日に借りる場合は延滞とは認めない。

【設計図レンタル注意事項、費用について】
  • 1基1回につき20,000 円(税込)※コピー不可、別途往復送料必要
  • レンタル設計図は到着日より1ヶ月以内に返却※延滞は禁止
  • 他者への貸し出し、譲渡、公開は禁止

【木型レンタル代・鋳物 支払い方法について】
レンタル代、鋳物購入代は設置日前の前払いになります。
金額と振込期限(レンタル申込後、愛農会から返信日より約1週間以内)を確認してからお申込をお願いします。
お申込後、愛農会からのメールに請求書を添付いたします。
※期日までにご入金頂けない場合は貸出や購入が難しい場合がございます。
 
愛農かまど製作について興味のある方、より詳細を知りたい方はまずは「愛農かまど問い合わせフォーム」よりお問い合わせ下さい。

 

愛農かまど伝承者7箇条について

愛農かまど伝承者7箇条とは、愛農かまど伝承者の理念になります。

愛農会では北村さんから愛農かまどの技術と心を受け継いだ野呂由彦さんの強い要望を受けて、2022年6月に「愛農かまど伝承者養成講座」を開催しました。

現在その講座を修了した9名のみなさんが、伝承者を志しながら、全国各地で愛農かまどを作るお手伝いをしてくださっています。

これまで45基以上の愛農かまどを作ってこられた野呂さん「僕自身もまだ伝承者ではなく、伝承者を志す者の一人です」とおっしゃいます。


その言葉どおり、伝承者への道は終わることはありません。

私たちは養成講座修了生のみなさんにその道を進む道しるべにしていただきたいと、野呂さん、そして第一期養成講座修了生とともに、以下のように「愛農かまど伝承者7箇条」を作りました。

これは私たち愛農かまどを大切にする者たちの願いです。

自作の方にも、修了生のサポートを受けていっしょに作る方にも、あるいは愛農かまどのことを知りたいと言う方にも、この7箇条をご一読いただければ幸いです。

1.愛農かまど伝承者は、「愛と平和」を主体的に担い、守り、育みます。

わたしたち伝承者は、愛農会が掲げる5つの理念(「百姓は自立する、生命を守りはぐくむ、金にしばられない、大地の恵みに生きる、世界をつなぐ心となる」)<と、
二つの祈り(「愛と協同の村づくり」と「世界平和」)を心に留めて愛農かまど作りに携わります。
また愛農かまどを作ることを通して、愛農かまど誕生の歴史的背景や継承されてきた経緯、愛農かまどが生み出す喜びや豊かさとともに、
これら愛農会の理念を伝えていくことを大切にします。

2.愛農かまど伝承者は、「物語」を育む伴走者として歩みます。

わたしたち伝承者は、目に見える「物」を作るだけではなく、「愛農かまど」を手段にして施主が自らの「夢」や「物語」を育むことができるよう協力します。
そのために、必要であれば対話やワークショップ(単なる作業ではない)等の手法を用い、施主やその家族や仲間が事前から関わり、
相談をして進めることができるように努めます。
また、材料の準備や仲間集めなど、愛農かまどづくりを地域とのつながりを深める機会にするという選択肢を提案し、
ひいてはそれらが共同体や社会を育むきっかけにすることを心掛けます。

3.愛農かまど伝承者は、「技」を磨き続けます。

わたしたち伝承者は、伝承者でありながら「伝承者を志す者」であることを自覚します。
自らの現在地を知り、繰り返しの鍛錬を行うことが技術力を生み出すと心得ます。
その道に終わりはなく、伝承者である限り、道具や材料の使い方、手順など、基本的な技術の向上に日々精進し続けます。
お金や地位、名誉のためではなく、自らが引き継いだ歴史や先人たちの想い、習得した技術や知識、経験をいかに次世代へ継承していくかに誠実に向き合い、
「技」を磨き、「愛農かまど」にこめられた精神性を伝える推進力とします。

4.愛農かまど伝承者は、作り、使い、直すことができます。

わたしたち伝承者は、5基以上の「愛農かまど」をその全工程に携わり製作した経験をもち、構造や機能、炊飯や調理の仕方を熟知しています。
設置場所や防火性能、煙突工事、薪の準備や火入、炊飯や調理の仕方、活用方法も含めて、施主からの相談に乗ることを通して愛農かまどの機能を最大限に引き出すお手伝いをします。
破損が生じたときにはその原因を特定し、それに応じた修繕方法を理解し、修繕の相談に乗ることができます。
設置をするまでも、したあとも、かまどと人に誠実に向き合い、世代を超えて使えるかまどに寄り添います。

5.愛農かまど伝承者は、かまど作りは掃除に始まり掃除に終わると心得え、実践します。

わたしたち伝承者は、かまど作りは掃除に始まり掃除に終わると心得ます。
日々の心の塵を払い誠実に生きる具体的な所作として掃除があります。掃除は安全につながる具体的な一歩でもあります。
かまどを作りはじめる前に掃除や汚損防止の養生を丁寧に行うことは現場の特徴を把握し、風土や仲間との一体感を高めることにもつながります。
作業の途中に掃除で一息入れることは、精神的にも物理的にもかまど作りの現在地を見えやすくしてくれます。
一日の終わり・全体の終わりに現場の掃除・道具の片付けを行うことは、ふりかえりや次への準備につながります。

6.愛農かまど伝承者は、風土に根ざした実践者です。

わたしたち伝承者は、「愛農かまど」は一つひとつが違う生き物であることを理解し、それぞれの場所に本来の姿で在る「愛農かまど」の誕生を助けます。
市販されている材料のみに頼るのではなく、伝統的な材料や地域にある自然資源、廃材を活用するなど、さまざまな選択肢にも柔軟に対応できる力量と風土と響き合う感性を持つことを心掛けます。

7.愛農かまど伝承者はネットワークの循環を促します。

わたしたち伝承者は、「愛農かまど」の完成は新たな始まりと心得えます。
「愛農かまど」を中心とする人の輪へと施主やワークショップ参加者などの人たちをつなぎ、
経験・情報・食材・人が循環する火のネットワークをますます豊かに燃え上がらせることに尽力します。

さいごに、愛農かまど伝承者は、正しさではなく矛盾や葛藤と共に在ります。

たくさんのつながりの中に私や私たちが生かされています。
愛農かまども自然や歴史の混沌の中から生み出され遺されてきました。
現場では予定した流れや設計図通りに進まないこともあります。
思い通りにならないことを受け入れた時に、自他やかまどの声が聞こえてきます。
共感や信頼をもとにご縁を育み、関わりあうことが大切です。