三重県伊賀市別府690-1

代表メッセージ

会長

村上真平 挨拶

愛農会会長 _村上真平_MurakamiShinpei

愛農運動とは、 平和な社会と自然を壊さない生活のあり方を 農を通して創る運動です。

  愛農会は七十年前、創始者小谷純一の「人類の平和」と「愛と協同の理想農村建設」という二つの祈りによって始まりました。 敗戦直後は食糧増産のための農業技術の研鑽会と「農業者たるまえに人間たれ」という言葉に表される農民の自主独立を確立する愛農教育を全国的に展開し、一九六三年には青年の愛農教育のための機関として愛農学園農業高等学校を設立しました。一九七〇年代には生命を守る農業としての有機農業へと転換し、その普及とともに生産者と消費者の連携づくりに力を注ぎました。そして二〇一一年からは「千年続く村づくり」のスローガンのもとに、真に持続可能な農村・社会づくりを目指しています。このように愛農会の活動の形は時代の流れとともに少しずつ変わってきています。 また活動範囲も、日本の農村から韓国・インド、そしてAFA(アジア農民の会)を通じてアジア地域の十三カ国へと広がり、国連機関・国際会議への出席を通して発言の場も広がってきました。 しかしながら愛農会につながる人々は一九六〇年代をピークに年々減り続け、現在は会員・賛助員・愛農誌購読者を合わせても千人に満たない状況です。愛農高校の生徒数も定員割れが続いています。地球規模での激動の時代にこの小さな愛農会が担う役割とは何なのでしょうか。そして愛農運動の目的とは何でしょうか。 私は愛農運動とは「地球上に生きる一人ひとり(全人類)が飢えに悩まされず争わず助け合って生きられる平和な社会(共同体)と、生命の源である自然(地球環境)を壊さない生活のあり方を、私たちと未来の子どもたちのために、農を通して創る運動」であると考えます。

人間の必要を生産する「農」を通して、 分かち合うことで生まれる幸せを広げていきます。

平和な社会の創設はすべての人の願いです。しかし世界を見れば、七十億の人々を食べさせるだけの食糧が生産されているにもかかわらず、十億近くの人々が日々の食を十分に得ることができていないという悲しい現実があります。いっぽう、世界の富豪六十二人が持つ資産が貧困のなかにある三十五億人の資産より多いという超がつくほどの貧富の格差があります。この極端な矛盾に満ちた世界は、まぎれもなく私たち人類が作った世界です。ではなぜこのような社会ができてしまったのでしょう。 その理由はさまざまでしょうが、根底には「幸せは競争して豊かさを奪い取り、蓄えることによって達成できる」という現代の幸福観があります。私たちは貧欲を肯定するモラルのなかに生きているのです。 ガンジーは「世界にはすべての人の必要を満たすものは十分にあるが、すべての人々の貪欲を満たすには十分でない」と看破しました。これからは「幸せは助け合い分かち合うことによって与えられる」という幸福観、モラルへと一八〇度転換することが求められます。しかし、これは本当に難しく、常に競争と実績を強いられる会社勤めの人には、不可能に近いものです。 ところが人間の生活に必要な衣・食・住・エネルギーを自分たちで生産できる「農」はこの転換を可能にするのです。そして自然と調和した農が人々に与える癒しと学びは、人間の本性の喜びを覚醒させる深さを持っています。その意味で、農の教育力はすべての分野の人々に分かち合うべき尊いものでもあります。愛農会はそのような「農」を実践し、人々にシェアーする(分かち合う)ことによって、平和な社会の創造を担ってゆきます。

真に持続可能な農業のあり方を探り、 その技術や考え方を広めることによって、 農業の形態を自然を守る方向に変えていきます。

農業は人間生活の根底を支えるものですので人間に益をもたらすはずのものですが、一万年前に人間が農業を発見して以来、農業が自然破壊の主役であったという歴史的事実があります。農業のもたらす余剰生産物によってエジプトなどで古代の都市文明が発生し栄えたのですが、農業による森林破壊と自然資源の収奪は地域的な気候変動をもたらし、古代文明発祥の地を人が住めない砂漠に変えてしまったのです。 なぜ農業は自然破壊をしてしまうのでしょうか。それは、自然の森が持っている持続可能性を支える「循環性」「多様性」「多層構造性」という自然の三つの原理を、人間が自分たちの利益を最大限にするために無視するからです。 それでも農業が人間の食料生産の主たる手段であり生活の一部になるなかで、私たちの先祖は、森を農地にすることによって壊してしまった循環性・多様性・多層構造性を農地に取り戻す農業技術を発達させ、自然との調和を保つ伝統的農法を確立しました。ところが第二次世界大戦後、科学技術の発達はまたしても農業をして環境破壊の主役にしてしまったのです。 愛農会はこれから、一九七〇年代に始まった有機農業運動を農業の歴史的流れのなかでもういちど捉えなおし、真の意味での持続可能な農業の技術や考え方を深め、多くの人にシェアーすることによって、環境破壊的な農業の形態を、自然を守り水源を涵養する農業に変えてゆくことを担います。

愛農運動は、 多くの人々と喜びをもって分かち合える隣人愛の実践でありたい。

そして、平和な社会の構築をめざし、持続可能な農業と生活を実践し共有してゆく愛農運動にとって、もっとも大切なものは隣人愛です。どんなに正しい行為でも、そこに愛がない時人は傷つきます。愛農運動は正しさを主張するものではなく、多くの人々と喜びをもって分かち合える隣人愛の実践でありたいと思います。そして愛の実践は人に対してだけでなく、動物・植物・微生物、そして地球・宇宙へと無限の広がりを持つものであると思います。